オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分(Locke)

 

 「インセプション」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のトム・ハーディ主演で、高速道路を走る主人公ただ1人が86分間にわたって映し出される異色のワンシチュエーションサスペンス。プライベートでは妻と2人の子どもにも恵まれ、仕事でも建築現場監督として評価され、順風満帆な人生を送っているアイヴァン・ロック。大規模なプロジェクトの着工を翌日に控えた夜、高速道路に乗り、目的地へ向かおうとしていたアイヴァンに1本の電話がかかってきたことから、全てが狂い始めていく。(映画.comより)

これって、こんな原題だったのですね。実は話題になってるな、と思いながらもつい見逃した作品。少し前に録画鑑賞しました。当時、かなり評判もよかったと記憶しています。出演者は、トム・ハーディただ一人のワン・シチュエーション・ムービー。

しかしですねぇ・・・結論から言うと、なんか期待はずれでした。あくまで個人の感想です。男性と女性では感想も違うでしょうし、主人公の「責任の取り方」にも賛否両論だと思うからです。

上にもある通り、社会的にも成功している男が、大事なときにたまたまかかってきた1本の電話により、予想できない行動を取り始めるというお話しです。そしてそれも、きちんと説明されるのではなく、主人公の電話の会話によってだんだん明らかになってゆくという展開です。場面は一切変わらず、見ている方は、どんな風に話が広がるのか、どんなどんでん返しがあるのかと、目を凝らし推理力をフル稼働させながら見ることになるのです。このへんはスリリングです。しかし、明らかになった事実がありきたりというか、私的には「な〜んだ」って感じで、これだけ引き延ばして含みを持たせてこれか、って感じが否めませんでした。いや、深刻なのですが、でも・・・って感じです。

<ここからネタばれ>

要は、調子に乗って出張先で1年ほど前に火遊びした女性が、妊娠していて今まさに出産するから来て欲しい、そんな電話だったわけです。女性は精神的に不安定で、病院スタッフも知り合いを捜して電話してきたのですね。で、トムは律儀にも明日始まる大プロジェクトを放棄して、家庭を壊してまでも、必死に駆けつけるわけです。その女性の不安定さは電話でも伝わってくるほどで、「こんな女によく関わったんだなぁ」と思いました。その時点でダメでしょう。これなら「危険な情事」のグレン・クローズのほうが、ずっとしっかりしています。愛してもない女と遊ぶのなら、避妊するべきなのに、往々にして成功している男ほど無頓着ですね。自信があるのか知らんけど。

それでも、トム本人は「俺が責任を取るから」って、英雄気取りです。仕事の方も、まだよくわからないような新人に丸投げして叱責。上司からは当然クビを告げられ、妻にも「俺は責任を取らなきゃいけないんだ」って、まるで自分がいいことをしているような開き直りよう。しかも電話で。その夜一緒にサッカー観戦する予定だった息子は、あまりの展開にどうしていいかわかりません。当たり前ですよね。

これだけドキドキさせて、こんなつまらない理由って、あります?こんなこと、女には考えられないですね。まぁそれでも、ラストは無事に病院に着いたようでした。相手の女性や赤ちゃんが映るわけではないですけれど。

これは、ワンシチュエイション・ムービーにする必要があったのかどうか、疑問の残る映画でしたね。