奥華子ニューアルバム『遥か遠くに見えていた今日』ファーストインプレッション
【総評】
正直、前作『プリズム』の上がりがあまりにも良かったので、アレを超えるのは難しいかなと思ってました。
でも、想像していたものよりも3倍、いや5倍は良いものになっているように感じました。
前作と比べてどちらが上とかそういうのではなく、どちらも胸を張って「これがぼくの大好きな奥華子だよ」と言って他人に薦められるアルバムです。
この2作はどちらも素晴らしい。
強いて言えば、先ずは最新作であるこちらを聴け、といったところでしょうか。
ファーストインプレッションでは、音も良かったです。
マスタリングはTEMAS Mastering Studioのシバ アキヒロ氏?(漢字不明)
レコ発のフリーライブも始まっていますので、少しでも興味を持たれた方は、是非足を運んで彼女の生歌を聴いてみてください。
http://okuhanako.com/information/post-3033/
以下、1曲ずつ個別にファーストインプレッションをば。
「Rainy day」
今やると、こうなるんですね。
どうやるのが正解だったのかは分からないけれど、先ずは、華子さんに最大限の感謝を。
その上で。
ベースはもっと抑え気味の方が良かったな。
そしてドラムはもっとハードな方が良かったように思います。
無理を承知で言うと、ブライアン・ダウニーが叩いていたら、どうなっていたかなぁとか。
ちょっとポップに寄り過ぎに感じました。
もっとタイトで重くて鋭い方が良かったのでは。
リズム隊が、まるで1stアルバムの頃に先祖返りしちゃったみたい。
ギターのアレンジは、あまり情熱的にやるよりはこの方が良かったのかな?
だとしたら、このアレンジで行くのなら、もし鬼怒無月さんが弾いていたらどうなっていたのだろうなぁと、どうしても、やっぱり、考えてしまった(特にサーカスチックな運指の所とか)。
それでも、想像していたものより3割増しでいい上がりになってました。
「恋のはじまり」
Aメロが坂本真綾の「a happy ending」みたいで好きです(笑)。
「Rainy day」から「愛という宝物」、というか、このアルバム、今の奥華子に繋げる曲なんですね。
2分の曲。
なるほど。
「愛という宝物」
ちょっと全曲ライブのせいで(苦笑)、食傷気味になってた曲の一つ。
曲自体はいいんですよ。
勿論詞も、アレンジも。
だから、とてもいい曲です。
「プロポーズ」
イントロが一瞬「手紙」かと思った。
と思ったら、歌が始まっても「手紙」かと思った(^_^;)
でも、この曲もとてもいいです。
あまりいい表現じゃないと思うけど、垢抜けた「手紙」って印象(「手紙」は「手紙」で、あの懐かしい感じがいいし、大好きな曲ですけどね)。
あと、なんか、ピアノ(キーボードのようだけど)がボンついたり音像が無駄に膨らむことなく、ちゃんと重い音でイイですね。
「彼女」
ギター、いいじゃないですか!
ヴァイオリンのアレンジもGood。
曲も素晴らしい。
ただ、ドラムがやっぱりポップでしんどい。
もっとストイックで、もっと必死な感じが欲しいんですよね。
どこか余裕というか、スカした感じがあって、ぼくは好きじゃないです。
こういうライトなアレンジで全然いいんですけどね。
もっともっとストイックで全身を使ってる感じで目が据わった(?)感じが欲しい。
「365日の花束」
静かに始まる曲が続きます。
ナイス
抑え気味のBメロのアレンジも大正解。
サビもとてもいい。
ここまで捨て曲ナシ。
華ちゃんの歌唱も、ここまでどれも正答で、こんなに上手かったっけ?(失礼)
曲や詞との一体感がスゴイ。
抑え気味のままとても抒情的で思いがのこもった歌唱。
ライブではなくスタジオでこれが録れれば、御の字。
「キミの花」
ここでこの曲が来るのか。
一気にガラッと雰囲気が変わったな。
この曲自体はとても好きなんですよ。
アレンジもいいし、キャッチーなポップロックでバランスもとてもいい。
でも、シングルで聴いた時は、唯一華ちゃんのボーカルだけが少しモタって聞こえたんですよね。
モタってたというか、なんか無理してこういう曲を歌ってる感じというか。
でも、よりワールドというかゾーンというか、“奥華子”が支配的なアルバムで聴くと、そこまで気にならないかな?
大サビ前のキーボードソロは、もっと憑りつかれたようなハジケた感じでやった方が良かったような気はします。
「ほのぼの行こう」
こういうアレンジ、大好物です!
華ちゃんにも合ってますよね、こういうヨーロピアントラッド(括り広過ぎ?アイリッシュトラッドとか似合うと思うんだけど、これはアイリッシュとかケルティックとか、或いはブリティッシュトラッドともちょっと違うしなぁ)。
「君のためならできること」とか「羽」みたいなの、もっとやってもいいよね。
「思い出になれ」
全曲ライブのせいで食傷気味になってた曲Part.?(苦笑)。
でも、これもムチャクチャいい曲なんですよ。
詞もいい。
なぜだろう、シングルよりももっと落ち着いた感じに聴こえますね。
このシングルって、もっと売れても良かったよなぁ。
なんでみんなもっと奥華子を聴かないんだ(無茶を言う)。
なんでもっとみんな奥華子を知ろうとしないんだ(無茶でも言う)。
これが、ぼくが愛してやまない奥華子なんだよ?
スゲェだろ?
「最後のキス」
シングルでは一応両A面だったもののB面的な感覚で、どうしてもこれまでの一般大衆が抱く奥華子のイメージを再生産した曲の一つって印象に感じてたけど、この流れで聴くと丁度いい。
この曲で、このメロで、このアレンジで、この位置の収録で、これ以外にないというくらい丁度いい。
……まぁ、実はそれは完全に予想通りなんですけどね。
こうなるだろうと思ってました。
そしてそうなってよかったです。
KAWAI SpectraとSM57による「小さな星」や「その手」などのようなインディーズ時代のテイスト感(?)がスゴイ!
これですよ!
これなんですよ!
奥華子はッッッ!
でも、楽曲は今の奥華子?
それも花マルです!
「アイスクリーム」
あれ?
なんか、新しい?
それも、とても好きな感じです。
クリーントーンのギターが少ししんどかったけど(これも鬼怒さんが弾いてたら絶対に音以上の部分が凄くてもっと良くなってたと思う)、サビなんかゼクシィのCMに使えよリクルート!
頼むから。
「スタンプラリー」
うーん、やっぱり1曲はこういうのが欲しいんですね。
ぼくは苦手なんだけど(^_^;)
でも、アレンジで一部変則的なビートを入れてきてて、しかもアウトロに酒場チックなストリングスアレンジもあって、十分聴けました。
「遥か遠くに」
〆にしてアルバム表題曲(?)。
構成としては「またこのワンパターンですか」なんだけど、メチャクチャいい曲です。
『プリズム』序盤に入ってたような曲を盛り上がる大トリに仕上げてきた感じ。
詞は愛すべき永遠に変わらない奥華子がそこに居ます。
ずっと誰かに届きます。
ぼくにも届きます。
ぼくも届けます。
“川のように愛が安全に自らの海を見つけられ”“今一つで完成するあらゆるものが仕上がり”(by Tommy Heart)、お互い、その一人が見つかって、そして見つかるだけではなく、ちゃんと人生の中で手にして生きていけますように。
切に願います。
以上、ファーストインプレッションでした。
2週目聴いたり、或いはヘッドフォンで聴いてみたら、また評価は全然変わるかも知れません。